2009年1月9日金曜日

不服2007-11666

【管理番号】第1187650号
【総通号数】第108号
(190)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】商標審決公報
【発行日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【種別】拒絶査定不服の審決
【審判番号】不服2007-11666(T2007-11666/J1)
【審判請求日】平成19年4月23日(2007.4.23)
【確定日】平成20年11月25日(2008.11.25)
【審決分類】
T18  .271-WY (Y41)
【請求人】
【氏名又は名称】株式会社Media Shakers
【住所又は居所】東京都港区東新橋一丁目8番3号
【代理人】
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 仁
【事件の表示】
 商願2006- 57734拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。
【結 論】
 原査定を取り消す。
 本願商標は、登録すべきものとする。
【理 由】
第1 本願商標
本願商標は、「M1F1グランプリ」の文字を標準文字で表してなり、第41類に属する願書記載のとおりの役務を指定役務として、平成18年6月21日に登録出願、その後指定役務については、原審における同19年1月12日付け手続補正書により、第41類「マーケティングに関する知識の教授,マーケティングに関するセミナー・シンポジウムまたは展示会の企画・運営又は開催,マーケティングに関する電子出版物の提供,マーケティングに関する書籍の制作,マーケティングに関する興行の企画・運営又は開催」に補正されたものである。
 
第2 原査定の拒絶の理由の要点
 原査定は、「本願商標は、その構成中に、『F1グランプリ』の文字を有してなるところ、該文字は、国際自動車連盟(FIA 本部スイス国ジュネーヴ)が規定するレース専用車両(フォーミュラーマシン)で競う最高峰のレースを表す、F1のグランプリレースであることを認識・理解させるものと認められるものであり、本願商標をその指定役務に使用するときは、これに接する取引者,需要者がその構成中の『F1グランプリ』の文字部分に着目して、周知著名となっている、国際自動車連盟公認レースである『F1グランプリ』(以下『引用標章』という。)を連想、想起し、該役務が上記連盟又は上記連盟と経済的・組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかの如く、その出所について混同を生ずるおそれがあるものと認める。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
 
第3 当審の判断
1 商標法第4条第1項第15号について
 商標法第4条第1項第15号(以下「本号」という。)において、「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標(第十号から前号までに掲げるものを除く。)」は、商標登録を受けることができない旨規定している。
 そして、最高裁平成10年(行ヒ)85号判決(判決日 平成12年7月11日)(以下「最高裁判決」という。)において、「『他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標』には、当該商標をその指定商品又は指定役務(以下『指定商品等』という。)に使用したときに、当該商品等が他人の商品又は役務(以下『商品等』という。)に係るものであると誤信されるおそれがある商標のみならず、当該商品等が右他人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品等であると誤信させるおそれ(以下『広義の混同を生ずるおそれ』という。)がある商標を含むものと解するのが相当である。」及び「『混同を生ずるおそれ』の有無は、当該商標と他人の表示との類似性の程度、他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や、当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし、当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断されるべきである。」旨判示されている。
 そこで、以上の観点から本件について検討する。
 
2 本願商標の本号の該当性について
(1)本願商標について
 本願商標は、前記第1のとおり「M1F1グランプリ」の文字を標準文字で表してなるものである。
(2)引用標章の著名性について
 「F1グランプリ」の文字は、例えば、「朝日現代用語『知恵蔵』2007」(朝日新聞社 発行)1033頁の「自動車レース」の項目における「F1グランプリ(F1GP)」の欄に「国際自動車連盟(FIA)が公認する世界最高峰の四輪自動車レース」の記載のほか、新聞記事等にも、多数の掲載が認められることから、引用標章「F1グランプリ」は、国際自動車連盟が、「四輪自動車のレースの企画・開催」について使用し、本願商標の登録出願前より取引者・需要者広く認識されているものとみるのが相当である。
(3)「混同を生ずるおそれ」について
(ア)本願商標と引用標章との類似性について
 本願商標は、前記2(1)のとおり、その構成各文字は、同じ書体、同じ大きさ、同じ間隔で外観上まとまりよく、一体的に表されているものである。
 また、「M1F1グランプリ」の文字から生ずる「エムワンエフワングランプリ」の称呼もよどみなく一連に称呼し得るものである。
 さらに、「M1F1グランプリ」の文字が、直ちに特定の意味合いを看取し得るものとはいい難く、構成文字全体をもって一体不可分の、一種の造語を表したものとして理解されるとみるのが相当である。
 他方、引用標章は、「F1グランプリ」の文字よりなり、その構成文字に相応して「エフワングランプリ」の称呼を生じ、かつ、「国際自動車連盟(FIA)が公認する世界最高峰の四輪自動車レース」の観念を生じるものである。
 そこで、本願商標と引用標章との類否について検討するに、本願商標と引用標章は、それぞれの構成に照らし外観上判然と区別し得る差異を有し、また、本願商標より生ずる「エムワンエフワングランプリ」の称呼と引用標章より生ずる「エフワングランプリ」の称呼とは、相違する各音の音質の差、音構成の差異等により明瞭に区別できるものであり、さらに、本願商標が特定の観念を生じない一種の造語というべきものであるから、観念上本願商標と引用標章を比較することはできない。
 してみれば、本件商標と引用標章とは、外観、称呼及び観念のいずれの点からみても相紛れるおそれのない非類似のものというべきである。
(イ)本願商標の指定役務と他人の業務に係る役務との間の性質、用途または目的における関連性の程度について
 本願商標の指定役務は、第41類「マーケティングに関する知識の教授,マーケティングに関するセミナー・シンポジウムまたは展示会の企画・運営又は開催,マーケティングに関する電子出版物の提供,マーケティングに関する書籍の制作,マーケティングに関する興行の企画・運営又は開催」であり、「市場調査等のマーケティングに関連した第41類に属する役務」であるのに対し、引用標章に関する役務は、「四輪自動車のレースの企画・開催」を提供する役務であり、役務の目的等を異にするものであり、取引者・需要者が必ずしも一致するものとはいい難い。
(ウ)本願商標に関する取引の実情について
 本願商標の構成中の「M1F1」の文字が、本願の指定役務との関係において、視聴率集計区分の1つで、「男性20歳から34歳、女性20歳から34歳」の層を指す語であることは、「現代用語の基礎知識2007」(自由国民社発行)813頁の「TRP」(Target Rating Point)の欄の記載及び請求人の提出の証拠資料第3号証ないし第5号証並びに別掲の新聞記事情報などからも認められるものである。
 さらに、当審において職権により調査すると、請求人(出願人)は、請求人(出願人)が運営する20歳から34歳までの若年層男女のマーケティング調査機関を通じ、首都圏のM1・F1層に注目された流行や話題となったものをマーケティング調査し、その結果を、ランキングとして発表しており、そのランキング結果を「M1F1グランプリ」と称している事実が認められるものである。
 しかしながら、「F1グランプリ」の文字が、本願の指定役務を取り扱う業界において、取引者・需要者に広く認識されている事実は、発見することができなかった。
(エ)まとめ
 前記(ア)ないし(ウ)からすると、本願商標と引用標章とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても紛れるおそれのない非類似のものであり、また、本願の指定役務と引用標章に関する役務は、役務の目的等を異にするものであり、さらに、請求人が、本願商標をその指定役務について、実際に使用している事実は認められるが、引用標章「F1グランプリ」の文字が、本願の指定役務との関係において、取引者・需要者に広く認識されている事実は見当たらない。
 してみれば、請求人(出願人)が、本願商標をその指定役務に使用しても、これに接する取引者・需要者をして、引用標章を連想または想起させるものとは認められず、その役務が、国際自動車連盟又は同人と経済的、組織的に何らかの関係ある者の業務に係る役務であるかの如く、役務の出所の混同を生じるおそれはないとみるのが相当である。
  
3 結び
 以上よりすると、本願商標が商標法第4条第1項第15号に該当するとして、本願を拒絶した原査定は取消しを免れない。
 その他、政令で定める期間内に本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論のとおり審決する。
【審決日】平成20年10月15日(2008.10.15)
【審判長】 【特許庁審判官】井岡 賢一
【特許庁審判官】小川 きみえ
【特許庁審判官】豊田 純一

別掲
「日経産業新聞」(2003年7月29日付け、5ページ) 
 「エキサイト――高い専門性、若年層つかむ(情報通信企業クローズアップ)」の見出しの下、「二〇〇二年三月、山村社長はテレビや広告業界で「M1・F1」(二十―三十四歳の男女)と呼ばれる顧客層に絞り込む方針を発表した。」の記載がある。
 
 
 

(210)【出願番号】商願2006-57734(T2006-57734)
(220)【出願日】平成18年6月21日(2006.6.21)
(541)【標準文字】
(561)【商標の称呼】エムイチエフイチグランプリ、エムワンエフワングランプリ、エムイチエフイチ、エムワンエフワン、グランプリ
【最終処分】成立
【前審関与審査官】蛭川 一治


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