2009年1月30日金曜日

不服2005-14210

【管理番号】第1187646号
【総通号数】第108号
(190)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】商標審決公報
【発行日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【種別】拒絶査定不服の審決
【審判番号】不服2005-14210(T2005-14210/J1)
【審判請求日】平成17年7月25日(2005.7.25)
【確定日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【審決分類】
T18  .13 -Z  (Y30)
T18  .272-Z  (Y30)
【請求人】
【氏名又は名称】クラシエフーズ株式会社
【住所又は居所】東京都港区海岸3丁目20番20号
【事件の表示】
 商願2004- 86217拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。
【結 論】
 本件審判の請求は、成り立たない。
【理 由】
1 本願商標
 本願商標は、「ベジィアイス」の片仮名文字と「Veggie ice」の欧文字とを上下2段に横書きしてなり、第30類「菓子及びパン」を指定商品として、平成16年9月17日に登録出願されたものである。
 
2 原査定の拒絶の理由の要点
 原査定は、「本願商標は、『Veggie ice』の文字と、その上部にその表音と認められる『ベジィアイス』の文字を普通に書してなるところ、その構成中の『Veggie』『ベジィ』の文字部分は『野菜』等を、『ice』『アイス』の文字部分は『氷菓子』等を、それぞれ意味する語として一般に広く使用されているから、これよりは全体として『野菜を使用したアイス』程度の意味合いを認識させるにすぎず、これを本願指定商品中、例えば『野菜を使用したアイス』等に使用するときは、単に、商品の品質、原材料を表示するにすぎないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記商品以外の商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるので、同法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
 
3 当審における証拠調べ通知
 当審において、本願商標が商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するか否かについて、職権により証拠調べをした結果、別掲に記載の事実を発見したので、平成20年6月6日付けの証拠調べ通知書により、請求人に対し、同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づく通知を行った。
 
4 証拠調べ通知に対する請求人の意見
 上記3の「証拠調べ通知」に対して、所定の期間を指定して意見を申し立てる機会を与えたところ、請求人からは何らの意見もなかった。
 
5 当審の判断
 本願商標は、上記1のとおり「ベジィアイス」の片仮名文字と「Veggie ice」の欧文字とを上下2段に横書きしてなるところ、その構成中、「Veggie」、「ベジィ」の文字(語)は、英語「veggie」に由来し、「野菜」(株式会社小学館発行「小学館ランダムハウス英和大辞典」、株式会社研究社発行「研究社新英和大辞典」)を意味しており、また、「アイス」、「ice」の文字(語)は、英語「ice」に由来し、「氷。アイス‐クリーム・アイス‐キャンデーの略。」(株式会社岩波書店発行「広辞苑第6版」)を意味する語として、一般に理解され、認識されているものといえることから、本願商標が、「ベジィ」の文字と「アイス」の文字とを、並びに「Veggie」の文字と「ice」の文字とを、それぞれ結合してなるものと容易に理解し得るものと認められる。
 そして、別掲の第1に記載の各事実によれば、本願指定商品中「アイスクリーム」等を取り扱う業界においては、野菜を原材料に使用するアイスクリーム等の氷菓子が製造販売されていること、並びに、野菜を原材料に使用するアイスクリームを「野菜アイス」「野菜アイスクリーム」と用いていること、さらには、商品「アイスクリーム」に「ベジアイス」の語が使用されていることが認められる。
 そうとすれば、「ベジィアイス」及び「Veggie ice」の文字からなる本願商標は、これをその指定商品中、「野菜を使用したアイス」について使用するときには、取引者、需要者をして、「野菜を原材料に使用したアイス」であることを表示したものであると理解、認識するにとどまるというのが相当であって、自他商品の識別標識としては認識し得ないというべきであるから、本願商標は、単に商品の品質を表示するにすぎないものといわざるを得ない。
 また、本願商標は、その指定商品中「野菜を使用したアイス」以外の商品について使用するときは、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるものというのが相当である。
 ところで、請求人は、「本願商標は、『ベジィ』または『Veggie』、『アイス』または『ice』の二つの語を結合して出願人が作り出した造語である。」旨主張している。
 しかしながら、仮に本願商標自体は造語であるとしても、それを構成する各単語の語義、並びに上記の各事実を踏まえてみると、本願商標からは原査定が説示する意味合いを有する複合語として認識されるものであり、本願商標が自他商品の識別標識としての機能を有しないこと、上記のとおりであって、この点につき、請求人の主張は採用することができない。
 あわせて、請求人は、「本願指定商品を取扱う業界において、『ベジィアイス』『Veggie ice』なる語が商品の品質、原材料表示としては言うに及ばず、その他の表示としても普通に使用されている事実はなく、インターネット情報を見ても『ベジィアイス』『Veggie ice』なる語を一連に連綴してなる本願商標と同様の標章の使用例は見当たらず、本願商標は指定商品との関係においても決して商品の品質、原材料を表示するものではない」旨主張している。
 しかしながら、ある商標が商標法第3条第1項第3号に該当するか否かについて争われた裁判(平成12年(行ケ)第76号 東京高等裁判所 平成12年9月4日判決言渡)の判決を見てみると、「商標法3条1項3号は、取引者、需要者に指定商品の品質等を示すものとして認識され得る表示態様の商標につき、それ故に登録を受けることができないとしたものであって、該表示態様が、商品の品質を表すものとして必ず使用されるものであるとか、現実に使用されている等の事実は、同号の適用において必ずしも要求されないものと解すべき」と判示しているところである。
 してみれば、本願商標が登録されるべきであるかどうかは、需要者等において、これがどのような意味を有するものとして認識され、把握され得るかによって判断されなければならないというべきであり、本願商標からは、「野菜を使用したアイス」の意味合いを容易に看取されることは上記のとおりであるから、請求人のこの主張も採用することができない。
 さらに、請求人は、「Veggie」、「ベジィ」、あるいは、「アイス」、「ice」の文字(語)を結合した登録商標を引用して本願商標が登録要件を具有するものである旨主張しているが、そもそも、商標の識別性の判断は,各商標につき、それぞれの構成態様や取引の実情等をも勘案し、個別具体的に判断されるべき性質のものであるばかりでなく、請求人の主張している登録例をもって本件の判断が拘束されるものでもないから、この点についても、請求人の主張は、採用することができない。
 したがって、本願商標が商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するものとして、本願を拒絶した原査定は、妥当であって、取り消すことはできない。
 よって、結論のとおり審決する。
【審理終結日】平成20年8月15日(2008.8.15)
【結審通知日】平成20年8月22日(2008.8.22)
【審決日】平成20年9月2日(2008.9.2)
【審判長】 【特許庁審判官】林 二郎
【特許庁審判官】小畑 恵一
【特許庁審判官】杉本 克治
別掲(「証拠調べ通知」の内容)
第1 本願商標を構成する「ベジィアイス」の片仮名文字と「Veggie ice」の欧文字に関して、書籍、新聞記事、及び、インターネット上のウエブページの検索結果によれば、次の事実が認められる。
1 本願商標は、「ベジィアイス」の片仮名文字と「Veggie ice」の欧文字とを上下2段に横書きしてなるところ、その構成中、「Veggie」、「ベジィ」の文字(語)は、英語「veggie」に由来し、「野菜」(株式会社小学館発行「小学館ランダムハウス英和大辞典」、株式会社研究社発行「研究社新英和大辞典」)を意味する語であること、また、同構成中「アイス」、「ice」の文字(語)は、英語「ice」に由来し、「氷。アイス‐クリーム・アイス‐キャンデーの略。」(株式会社岩波書店発行「広辞苑第6版」)を意味する外来語であること。
2 本願指定商品「菓子及びパン」には、「アイスクリーム,アイスキャンディー」等が含まれているところ、該商品を取り扱う業界においては、野菜を原材料として使用したアイスが、一般に製造・販売されている実情が、以下の(ア)ないし(サ)に掲げる新聞記事、及びインターネット上のウェブサイトの記事の記載において認められる。
(ア)2004年7月8日付け読売新聞東京版朝刊30ページには、「[プロに聞く・彩の国流行事情]アイスクリーム 多彩なメニューが登場=埼玉」と題する記事中、「妻沼町弥藤吾、『道の駅めぬま』にある地域振興施設『めぬぱる』二階のレストラン『サラダ館』では、地元の特産品の大和芋やニンジンなどを使ったアイスクリームが売られている。」との記載がある。
(イ)2004年8月24日付け朝日新聞大阪地方版京都 29ページには、「京野菜がアイスに 仏料理店が考案/京都」と題する記事中、「京野菜として知られる万願寺とうがらしや賀茂なすが、カップ入りのアイスクリームになった」との記載がある。
(ウ)2005年5月12日付け読売新聞東京版朝刊28ページには、「[食在東京]野菜アイス『グリーンベル』 さっぱり、自然の冷たさ」と題する記事中、「ニンジン、ショウガ、レンコン、モロヘイヤ……。ショーケースに野菜の名前がずらり。だが、並ぶのは色とりどりのアイスだ。」、「台東区浅草の『グリーンベル』は、野菜を使った手作りのアイスクリームの販売店。」、「同店のショーケースに常に並ぶのは14種類。野菜のほか、イチゴやバナナなどの果物、ビールやほうじ茶、納豆なども原料とする。」、「〈野菜アイス〉野菜を煮たり煎(い)ったり、蒸したりして下ごしらえをし、主に牛乳と卵、三温糖を加える。」との記載がある。
(エ)2005年6月30日付け読売新聞東京版朝刊32ページには、「[The食]野菜アイス 野菜の風味生かす40種類の商品開発=茨城」と題する記事中、「かすみがうら市戸崎原の『北斗の会』が製造販売する『野菜アイス』が口コミで評判を呼び、全国各地から注文が舞い込んでいる。人気の紫いもはじめ、ソラマメやブルーベリー、黒ゴマ、ニンジン、レンコンまで各種野菜の風味を生かしたアイスクリームは40種類を超える。」との記載がある。
(オ)2006年8月10日付け日本農業新聞12ページには、「[一村逸品]BOSS&MOMアイスクリーム/兵庫・三木市 合計60種類の味」と題する記事中、「朝搾りのミルクと旬の野菜、果物を原料に作るアイスクリームは60種類以上もある。」との記載がある。
(カ)2007年3月30日付け日本食糧新聞には、「『野菜のアイス いちごタイプ』発売(セイヒョー)」と題する記事中、「◆会社名=セイヒョー(新潟県新潟市、025・386・9988)◆商品特徴=ラクトアイス。『野菜のデザート』シリーズ新ラインアップ。野菜成分を30%含んでいる。アイスクリーム部分に使用している野菜はニンジン、セロリ、赤ダイコン、ホウレン草、レタス、玉ネギ、パセリの7種類。」との記載がある。
(キ)2007年5月2日付け日本農業新聞40ページには、「地場産素材のアイスが人気 ハトムギ、野菜味など20種/栃木・小山市の酪農家女性」と題する記事中、「栃木県小山市の酪農家の女性5人で運営する『アイス工房カウベル』のアイスクリームが好評だ。休日には順番を待つ列ができるほどの盛況ぶり。保存料や添加物を使わず、県産生乳と市内で栽培したハトムギ、野菜を使い、ここでしか味わえない逸品となっている。」、「アイスクリームに使う素材は県産生乳と、道の駅で販売する野菜。ホウレンソウ味、モロヘイヤ味など20種類ほどが店に並ぶ。」及び「野菜を使った商品も、最初のうちはスタッフが思い描く味が出せなかった。そこでアイスクリームの甘さを抑え、野菜のうまみと色を引き出すように工夫を重ねている。」との記載がある。
(ク)有限会社ほしの「アイス処『あったか屋☆ほし』」のウェブページ中、「アイスクリーム販売の種類一覧」(http://www.via-lactea.jp/ice-itiran.htm)には、「いちごアイス」「かぼちゃアイス」「小倉アイス」「バニラアイス」「チョコレートアイス」「抹茶アイス」等の記載がある。
(ケ)社団法人日本アイスクリーム協会のウェブページ中、「アイスクリームの作り方 和風素材のアイスクリーム」(http://www.icecream.or.jp/cooking/make04.html)には、「あずきのアイスクリーム、抹茶のアイスクリーム、しょうがのアイスクリーム、さつまいものアイスクリーム、ごまのアイスクリーム、ライス(米)のアイスクリーム」との記載がある。
(コ)有限会社雪和商事が運営する「アイス天国」のウェブページ中、「選べる野菜アイスクリームセット」(http://www.ice-tengoku.com/syohin/hoku001.html)には、「自家生産の野菜を中心に牛乳、砂糖などこだわりの原料で製造したアイスです。香料や着色料、保存料を使用しないため自然な野菜の色や風味が生きています。」との記載がある。
(サ)野菜アイス北斗の会のウェブページ中、「バラエティセット12個入り」(http://hokuto.hs.shopserve.jp/SHOP/57.html)には、「野菜アイスのバラエティセット!!」との記載、及び、「野菜アイス」との表示が容器にされている画像(http://hokuto.hs.shopserve.jp//pic-labo/llimg/set-12-01.jpg)がある。
3 本願指定商品を取り扱う食品業界において、「ベジィアイス」または「Veggie ice」の文字(語)と同義のものと認められるとともに、称呼においても明確な差を有しない「ベジアイス」の文字(語)が、一般に使用されている実情が、以下の(ア)ないし(エ)に掲げる新聞記事、及びインターネット上のウェブサイトの記事の記載において認められる。
(ア)2005年10月3日付け外食レストラン新聞には、「必見必試の商品開発:長沼あいす『ルバーブアイス』」と題する記事中、「今年4月、パイ生地の中にアイスクリームを入れた『パリパリベジアイス』をローソンとタイアップ発売して大ヒットしました。この中身であるルバーブアイスを業務用製品として売り出すと聞きますが。山口 パリパリベジアイスは、人気テレビ番組の企画で、『野菜を使ったアイスクリームを作ってほしい』と依頼されたのがきっかけで誕生しました。」及び「ルバーブは、別名『西洋フキ』と呼ばれる多年草で、春と秋に収穫されます。」との記載がある。
(イ)株式会社エコホリスティックの「ママンテラス」のウェブページ中、「リトルママンメニュー スイーツ」(http://www.maman.jp/littlemaman/menu.html#sweets)には、「ドリンクセット ショーケースの中からお好きなケーキ1つ+ベジアイス+フルーツソース+フルーツカット+ドリンク」との記載がある。
(ウ)stmxソーシャルマーケットプレイスのウェブページ中、株式会社ジャパン永聯が運営する「ハッピーマーケット RaiRai」には、「マクロビオティックリセット食 スペシャルセット」(http://www.store-mix.com/ko-bai/product.php?pid=694394)として、「ベジアイス 乳製品・卵・砂糖を使用せず豆乳に米飴とメープルで甘味をつけた100%ベジタブルなヘルシーアイス。」との記載がある。
(エ)Yahoo!ショッピングのウェブページ中、株式会社日緑が運営する「エンジョイライフヤフー店」には、「送料無料!マクロビオティックリセット【ダイエット】」(http://store.shopping.yahoo.co.jp/ippuku/bb7540.html#)として、「ベジアイス 乳製品・卵・砂糖を使用せず豆乳に米飴とメープルで甘味をつけた100%ベジタブルなヘルシーアイス。」との記載がある。
第2 上記第1に記載の各事実によれば、本願指定商品中「アイスクリーム」等を取り扱う業界においては、野菜を原材料に使用するアイスクリーム等の氷菓子が製造販売されていること、並びに、野菜を原材料に使用するアイスクリームを「野菜アイス」「野菜アイスクリーム」と用いていること、さらには、商品「アイスクリーム」に「ベジアイス」の語が使用されていることが認められる。
 そうすると、「ベジィアイス」及び「Veggie ice」の文字からなる本願商標を、その指定商品中、「野菜を使用したアイス」について使用するときには、これに接する需要者は、上記実情からして、「野菜を原材料に使用したアイス」であることを表示したものであると理解、認識するにとどまるというのが相当であって、自他商品の識別標識としては認識し得ないというべきであるから、本願商標は、単に商品の品質を表示するにすぎないものといわざるを得ない。
 また、本願商標は、その指定商品中「野菜を使用したアイス」以外の商品について使用するときは、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるものといわなければならない。
 
 

(210)【出願番号】商願2004-86217(T2004-86217)
(220)【出願日】平成16年9月17日(2004.9.17)
(561)【商標の称呼】ベジイアイス、ベジーアイス、ベジイ、ベジー
【最終処分】不成立
【前審関与審査官】稲村 秀子

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