2009年1月30日金曜日

不服2008-3026

【管理番号】第1187601号
【総通号数】第108号
(190)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】商標審決公報
【発行日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【種別】拒絶査定不服の審決
【審判番号】不服2008-3026(T2008-3026/J1)
【審判請求日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【確定日】平成20年11月17日(2008.11.17)
【審決分類】
T18  .262-WY (X25)
T18  .264-WY (X25)
【請求人】
【氏名又は名称】株式会社エーダイニット
【住所又は居所】埼玉県羽生市北1丁目12番33号
【代理人】
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 良夫
【事件の表示】
 商願2007- 32234拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。
【結 論】
 原査定を取り消す。
 本願商標は、登録すべきものとする。
【理 由】
1 本願商標
 本願商標は、別掲のとおりの構成よりなり、第25類に属する「靴下」を指定商品として、平成19年4月3日に登録出願されたものである。
 
2 引用商標
 原査定において、本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして、本願の拒絶の理由に引用した商標は、以下のとおりであり、その商標権は現に有効に存続しているものである。
(1)登録第4387005号商標(以下「引用商標1」という。)は、「セブンエイト」の文字を標準文字で表してなり、平成11年6月24日登録出願、第5類「薬剤,歯科用材料,医療用油紙,衛生マスク,オブラート,ガーゼ,カプセル,耳帯,眼帯,生理帯,生理用タンポン,生理用ナプキン,生理用パンティ,脱脂綿,ばんそうこう,包帯,包帯液,胸当てパッド,医療用腕環,失禁用おしめ」を指定商品として、同12年5月26日に設定登録されたものである。
(2)登録第4670235号商標(以下「引用商標2」という。)は、「魔法の靴下」の文字を標準文字で表してなり、平成13年12月11日登録出願、第25類「靴下」を指定商品として、同15年5月9日に設定登録されたものである。  
  
3 当審の判断
(1)本願商標の指定商品と引用商標1の指定商品との類否について
 原査定において、本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとの認定、判断は、本願商標の指定商品「靴下」(以下「本願商品」という。)と引用商標1の指定商品中の「失禁用おしめ」(以下「引用1商品」という。)とが類似することが前提となっている。
 しかして、商品の類否の判断は、取引の実情、即ち商品の生産部門、販売部門、原材料及び品質、用途、需要者の範囲が一致するかどうか、完成品と部品との関係にあるかどうか等を総合的に考慮して判断をすべきものであり、その類否は、2つの商品に同一又は類似の商標が使用された場合、これに接する取引者、需要者が商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるかどうかにより判断すべきものである。
 そこで、本願商品と引用1商品との類否を判断するに、本願商品は「靴を履く時などに足に直接はく衣料」(株式会社岩波書店 広辞苑第五版)であり、他方、引用1商品は尿漏れを受けるための商品であって、紙製のものが主流であり衛生用品として販売されていることが多く、その生産者、原材料、品質、用途、販売場所等において著しく相違し、また、完成品と部品との関係にないことも明らかであるとみられるから、これらの商品が、一般の家庭で日常使用される商品であり、需要者を共通にする場合があるとしても、両者に同一又は類似の商標が使用された場合において、取引上商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれはないものとみるのが相当である。
 よって、本願商品と引用1商品とは互いに類似しない商品といわざるを得ない。
 したがって、本願商標の指定商品と引用商標1の指定商品とは類似する商品であるとした原査定は妥当なものとはいえない。
(2)本願商標と引用商標2との類否について
 本願商標は、別掲のとおり、簡略化した靴下と思しき図形を描き、その図形内には、横書きで「マイナスイオン効果シリーズ」、「『くちゴム』ゆったり」、「セブンエイトの足を冷やさない魔法のくつ下」、「冷え性の人にも最適なあったかくつ下」、「アレルギーの人にも最適な健康くつ下」、「サラッとした快適くつ下」、「かかとカサカサ解消」、「毛玉防止」、「外側素材 毛玉防止糸使用」の文字を書してなるところ、図形部分及び文字部分は、これらを常に一体不可分のものとしてのみ認識しなければならない格別の事情を認め得ないものであるというのが相当である。
 しかして、構成中の文字部分において、中央やや上部に顕著に表された「セブンエイトの足を冷やさない魔法のくつ下」の文字以外の文字部分は、本願指定商品との関係では、商品の品質を表示する語というべきであり、また、「セブンエイトの足を冷やさない魔法のくつ下」の文字中の「の足を冷やさない魔法のくつ下」の部分は、商品についての一種の誇称表示、若しくは、キャッチフレーズとして、それぞれ認識、理解されるものであって、自他商品の識別力が無いか又は極めて弱いものといわざるを得ない。
 そして、簡易迅速性を重んじる取引の実際において、需要者、取引者は、その商品に使用された商標の自他商品の識別機能を有する部分を適宜抽出し、その称呼を簡略化して取引に資する場合のあることは、経験則上明らかなところである。
 そうとすれば、「セブンエイトの足を冷やさない魔法のくつ下」の文字部分においては、「セブンエイト」の文字部分が自他商品の識別標識としての機能を果たし得ると認められるものであるから、前記文字部分において、その全体より生じる称呼以外に生じる称呼は、「セブンエイト」の称呼のみというべきである。
 他方、引用商標2は、「魔法の靴下」の文字を標準文字で表してなり、これよりは「マホウノクツシタ」の称呼を生ずる。
 してみれば、本願商標より「マホウノクツシタ」の称呼をも生ずるとし、その上で、本願商標と引用商標2とが称呼上類似するものとした原査定は妥当なものとはいえない。
(3)まとめ
 以上のとおり、本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとした原査定は取消しを免れない。
 その他、政令で定める期間内に本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論のとおり審決する。
【審決日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【審判長】 【特許庁審判官】芦葉 松美
【特許庁審判官】酒井 福造
【特許庁審判官】小松 里美

<別掲>
本願商標(色彩については、原本参照。)
 

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