2008年12月6日土曜日

不服2006-18863

【管理番号】第1182965号
【総通号数】第106号
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許審決公報
【発行日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【種別】拒絶査定不服の審決
【審判番号】不服2006-18863(P2006-18863/J1)
【審判請求日】平成18年8月29日(2006.8.29)
【確定日】平成20年8月12日(2008.8.12)
【審決分類】
P18  .121-Z  (C08G)
【請求人】
【氏名又は名称】エア プロダクツ アンド ケミカルズ インコーポレイテッド
【住所又は居所】アメリカ合衆国 ペンシルヴェニア アレンタウン ハミルトン ブールヴァード 7201
【代理人】
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 千嘉
【事件の表示】
 特願2000-262025「ポリウレタン軟質成形フォームを製造するためのシリコーン界面活性剤」拒絶査定不服審判事件〔平成13年3月27日出願公開、特開2001-81151〕について、次のとおり審決する。
【結 論】
 本件審判の請求は、成り立たない。
【理 由】
1.手続の経緯
 本願は、平成12年8月31日(パリ条約による優先権主張、平成11年9月1日、米国)の出願であって、平成17年7月12日付けで拒絶理由が通知され、同年10月14日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成18年5月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年8月29日に審判請求がなされ、同年11月2日に審判請求書の手続補正書(方式)が提出されたものである。
 
2.本願発明
 本願の請求項1~22に係る発明は、平成17年10月14日提出の手続補正書により補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1~22に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】 ウレタン触媒、発泡剤として水、場合により気泡開放剤、および式:
   Me3Si(OSiMe2)x(OSiMeG)yOSiMe3 
{式中、xは1~4.5の平均値を有し、そしてyは0.75~7.5の平均値を有し、x/yの値は0.25~5であり、そしてx+yの値は5よりも大きく9までであり、Gは式-D(OR'')mA[ここで、Dは二価の有機結合基であり、R''はアルキレン基であり、mは1~5の平均値を有し、そしてAは-OR'''または-OOCR'''基(ここで、R'''はメチル、エチルならびにメチルおよびエチルの組合せからなる群から選ばれる)を示す]を有する基である}を有するシリコーン界面活性気泡安定剤を0.05~0.15部/ポリオール100部の量の存在下で、有機ポリイソシアネートをポリオールと反応させることからなるポリウレタン軟質成形フォームを製造するための方法。」
 
3.原査定の理由の概要
 原査定の理由とされた平成17年7月12日付け拒絶理由通知書に記載した理由1の概要は以下のとおりである。
「この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。また、この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
    記   (引用文献等については引用文献等一覧参照)
・請求項   1-11
・引用文献  1
           引 用 文 献 等 一 覧
1.特開昭50-134098号公報」
 
4.合議体の判断
 4-1.引用文献1の記載事項
 原査定において引用された刊行物である引用文献1には、以下の事項が記載されている。
(摘示a)
「(1)[I](A)(i)少なくとも40モル%の一級ヒドロキシル基を含みそして1モル当り2,000ないし8,000グラムの範囲内の分子量を有するポリエーテルトリオールおよび
(ii)(i)と、平均して少なくとも2個のヒドロキシル基を有する追加のポリエーテルポリオールとの混合物で、その際このポリエーテルポリオールは(ii)の全ポリエーテルポリオール含有量の少なくとも40重量%までの量で混合物(ii)中に存在する、
から成る群から選択されるベースポリエーテルポリオ一ル100重量部、
(B)組成物中の各ヒドロキシル基に対して、化学量論的基準で、90-120%のイソシアネート基を与えるのに十分な量の有機ポリイソシアネート、
(C)高反発弾性ポリウレタンフオームの生産のための触媒的量の触媒
(D)1-10重量部の発泡剤、
(E)下記の1)、2)、3)、4)またはそれらの混合物から成る群から選択されるシロキサン-オキシアルキレンコポリマーのフオーム安定化量、ただし
1)は一般式
 RaSi{(OSiMe2)eOSiMe2G}4-a 
[式中Rは脂肪族不飽和分を含まない炭化水素基でそして1-10個の炭素原子を含み、
 aは0-3であり、
 Meはメチル基であり、
 Gは-D(OR”)mAおよび-L-D(OR”)mA
(但しLは酸素または硫黄原子であり、
Dは                           .
(i)アルキレン基、
(ii)炭素、水素および酸素原子、その酸素原子はエーテル、エステルまたはヒドロキシ基として存在する、からなる基、および
(iii)炭素、水素および硫黄原子、その硫黄原子はチオエーテル、チオエステルまたはチオール基として存在する、から成る基、
からなる群から選択される2価の結合基であつて、D中には8個より多くない炭素が存在し、そしてLはD基の炭素原子に結合されており、
R”はプロピレン基とエチレンおよびブチレン基から成る群から選ばれる基とから成りその際エチレンおよびブチレン基の量は全(OR”)基の35重量%より少なく、
 mは1-15の平均値を有し、
 Aは-OR’、-OOCR’基、およびOCOOR’基から成る群から選
                    ∥
                    O
ばれる基であつてその際R’は炭化水素およびハイドロ力ーボキシ基から選ばれる脂肪族不飽和分を含まない基であって、A基は全部で11個より少ない原子を含む)
から成る群から選ばれる基であつて、式中a=0の場合にはeは0、1または2であり;a=1の場合にはeは0、1、2または3であり;a=2の場合にはeは0-5であり、そしてa=3の場合にはeは1-7である]、を有し、
 2)は一般式
 GMe2Si(OSiMe2)f(OSiMeG)bOSiMe2G
(上式においてb=0の場合にはfは0-7であり;b=1の場合にはfは0-7であり;b=2の場合にはfは0-5であり;b=3の場合にはfは0-4でありそしてb=4の場合にはfは0-2である)、を有し、
 3)は一般式
 RaSi{(OSiMe2)g(OSiMeG)cOSiMe3}4-a(上式においてa=0、g=0の場合にはc=1であり;a=1、g=0の場合にはcは1であり;a=2、g=0の場合にはc=1または2であり;a=3、g=0の場合にはc=1-3であり;a=1、g=1の場合にはc=1であり;a=2、c=1の場合にはg=1または2である)、を有し、
 4)は一般式
 Me3Si(OSiMe2)h(OSiMeG)dOSiMe3 
(上式においてhは0-7の平均値を有し、dは1-5の平均値を有しそしてh=0の場合にはd=1-5であり;h=1または2の場合にはdは1-4であり;h=3または4の場合にはdは1-3であり;hが5の場合にはdは1-2であり;そしてhが6または7の場合にはd=1である)を有す、
から本質的に成る均質混合物を造り、
[II]次いでこの混合物を発泡させ、そして
[III]この発泡した組成物を硬化させる
の各段階を含むことを特徴とするワン-シヨツトポリエーテルベース高反発弾性ポリウレタンフオームの製造方法。」(特許請求の範囲第1項)
(摘示b)
「成分I(D)、即ち発泡剤は水または低沸点有機液体である。」(第8頁左下欄第16~17行)
(摘示c)
「最後の主要成分I(E)はシロキサン-オキシアルキレンコポリマーフオーム安定剤である。本発明に使用される場合、このフオーム安定剤は希釈せずに使われるときはベースポリエーテルポリオール100部につき0.02-2.0部の範囲の量で利用される。最も望ましくは 100部のポリエーテルポリオールにつき0.5-1.0部の範囲内で使用される。」(第8頁右下欄第13行~最下行)
(摘示d)
「本発明の方法の本質は発泡系にこの新規のシロキサン-オキシアルキレンコポリマー、成分(E)を使用することである。
 フオーム安定剤として使用した場合に硬化フオームが微細-均質細胞から成り立つことを可能にするのはこの特定のシロキサン-オキシアルキレンコポリマーである。フオーム安定剤として使用した場合に硬化フオームに空隙、割れ目および孔が無くそして厚板に収縮を生じさせないのはこの特定のシロキサン-オキシアルキレンコポリマーである。フオーム安定剤として使用した場合に硬化フオームに成形フオームとしての利用に有用な物性を与えるのはこの特定のシロキサン-オキシアルキレンコポリマーである。」(第9頁左上欄第1~14行)
(摘示e)
「実施例2
 本発明におけるフオーム安定剤として有用なシロキサン-オキシアルキレンコポリマーの調製。
 温度計、空気モーター、加熱装置およびCaCl2管を載せた還流凝縮器を装備した1立入り三首ガラスフラスコ中に200gの実施例1のシロキサン、280gのMeO(C3H6O)3Hおよび50gの無水キシレンを入れた。この混合物を100℃に加熱しそして3mlのH2ptCl6・H2O溶液(30ppmpt)を加えた。還流させながら152 ℃で6時間反応させそして試験を行うと少量のSiHの残留を認めた。少量のオクト酸第一錫を加えて残留SiHを除去しそして混合物をさらに1時間加熱した。低沸点物質を除去するためにこの液を放散きせた。この物質は次の一般式を有していた:
 Me3SiO(Me2SiO)1.0(MeSiO)1.0SiMe3 
                     |
                    (OH6C3)3OMe
実施例3
 市販のフオーム安定剤を比較用に使用して実施例2の物質のフオーム系における評価。
 これはポリオール系のポリマーである。プレミツクスの調製:
 a)Pluracol 5811  40.0 部  4080.0g
 b)Dow CP47012    60.0 部  6120.0g
 c)水               2.6 部   265.2g
 d)トリエチレンジアミン      0.04部     4.0g
 e)Houdry X-Dm3    0.80部    81.6g
 
1水酸基数26MgKOH/gおよび77゜Fでの粘度2800cpsを有するグラフトポリグリコール。
250%酸化エチレン末端ブロツクを有する分子量4700のポリプロピレングリコールトリオール。
380/20トルエンジイソシアネートおよび重合体状イソシアネートを含むイソシアネート。
 この混合物を4時間混合して均質化させた。
 上記プレミツクスの103.44gに次のものを添加した:
 f)ジオクチルフタレートに10%溶かした
   オクト酸第一錫         0.03部
 g)WUC-3051-T(イソシアネート)
                   34.2部
 発泡機を動かすのに十分な量を得るために上記の物質の多量を合体きせた、即ち517gのプレミツクスおよびf)を1.5gとg)を171gと。
 機械を毎分1200回転で動かし混合時間はプレミツクスに対し20秒そして最終混合物に対し5秒であった。 



」(第12頁右上欄第19行~第13頁左上欄第10行)
(摘示f)
「実施例6
 この実施例では実施例5のシロキサンを使つてSi-C結合界面活性剤の調製を示す。
 1立入り三首フラスコに400gの実施例5からのシロキサン、257gの
CH2=CHCH2(OCH2CH2CH2)2.2OMeを入れた。この混合物を110℃に熱しそして0.3ccの白金触媒溶液を添加した(3ppmPt)。混合物は発熱して147℃になりそして140℃で1時間、次いで120℃で3時間熱した。生成物を濾(引用文献1の文字が表記できないため「濾」で代用。)過すると淡黄色の透明溶液を得た。残留SiHは0.012%であつた。
 この界面活性剤をCP-4701ポリグリコール中に2.5重量%に希釈しそして下記のようにフオーム系中で評価した。
 ポリオール系中のポリマーとしてプレミックスを造つた。
       成    分         量.g     部   
(a){(CH3)2NCH2CH2}2O    2.4   0.8
(b)NEM(n-エチルモルホリン)     24.0   0.8
(c)トリエチレンジアミン           2.4   0.8
(d)蒸溜水                 84.0   2.8
(e)Niax(R)ポリオール11-341 1800.0  60.0
(f)Niax(R)ポリオール34-281 1200.0  40.0
(登録商標の記号が表記できないため「(R)」で代用。以下同じ。)
1淡色、低粘度ポリオールで通例のポリオールの存在の下でビニルモノマーをその場で重合させて得た。11-34は20℃で1050csの粘度および32.5ないし35.5mgKOH/gの水酸基数を有する。Niax(R)ポリオール34-28はブルツクフイールド粘度計で25℃において2550cpsの粘度を有する。
この物質をローラー上で4時間混合して各成分を十分分散させた。
各103.76gのプレミツクスに次のものを加えた:
(a)界面活性剤
(b)0.03gのジラウリン酸ジブチル錫、十分混合して次のものを加えた
(c)80/20トルエンジイソシアネート80部とポリメチレンポリフエニルイソシアネート20部から成る34.2gのイソシアネート配合物。
次のような方法により添加した:
(1)界面活性剤および錫触媒をプレミツクスに添加した;
(2)市販の混合機を使用して20秒間毎分750回転で混合した。
(3)イソシアネートを添加した。
(4)毎分1250回転で4秒間混合した;
(5)容器(金型)中に注ぎ入れそしてライズさせた;
(6)完全にライズした後、15分間107℃で要すれば後硬化させた;
(7)フオーム試料を切りそして収縮傾向と通気性を測定するために冷却した。
 上記の方法を使用し、フオーム安定剤として上記実施例からの物質を用いて次の結果が得られた。
 1.0pphの界面活性剤で:ライズ=51/2;細胞=1.5;通気量=15.86/172.8;割れ目および空隙なし;収縮なし。
実施例7
 本発明の範囲内で次の式を有する3界面活性剤をポリオール系中のポリマーにつき有効性を試験した。 



全部の界面活性剤はCP-4701中に7.5重量%に希釈した。
 総ての場合にGは-(CH2)3(OCH2CH2CH2)2.2OMeであつた。
 フオームに対し次の処方を使った。
(a)60部    CP-4701(一級ヒドロキシル-Dow)1 
(b)40部    Pluracol 581(Wayandotte           Chem)1 
(c)0.08部  (CH3)2NCH2CH2OCH2CH2N(CH
          3)2 
(d)0.8部   N-エチルモルホリン
(e)0.08部  トリエチレンジアミン
(f)2.8部   水
 1実施例3を参照のこと。
 プレミツクスに界面活性剤を添加しそして
(g)0.03部  ジラウリン酸ジブチル錫
(h)34.2部  前の実施例のようなイソシアネート配合物。
 手順:
(1)(g)および界面活性剤を毎分750回転で20秒問混合して混ぜる;
(2)イソシアネートを加えそして毎分1250回転で4秒混合する;
(3)注ぎ出しそして3分間おいて次に107℃で15分間後硬化させる。
(4)冷却し切る。
 その結果: 



実施例8
 上の実施例の3界面活性剤をヘテロポリオール系で評価した。
 フオームに対する処方は次の如くであった:
          プ レ ミ ツ ク ス 
(a)96部    CP 47011 
(b)0.08部  (CH3)2NCH2CH2OCH2CH2N(CH
          3)2 
(c)0.8部   N-エチルモルホリン
(d)0.08部  トリエチレンジアミン
(e)2.8部   水
(f)4.0部   Pluracol 3552(453水酸基数)
 このプレミツクスに界面活性を加えそして
(g)0.03部  ジラウリン酸ジブチル錫
(h)35.0部  実施例6からのイソシアネート配合物。
 1実施例3を参照。
 2ポリグリコールで、Wyandotte Chemical,Wyandotte,Michiganから得られる。
 手順:本質的に実施例7と同様である。
             結   果
界面活性剤         No.1    No.2    No.3
pph界面活性剤       1.0     1.0     1.0
細胞大さ           1.0     1.0     1.5
収  縮                  少しあり     な し
通気量-押砕したもの      -    56.64    90.6
空  隙           な し     な し     な し
」(第13頁左下欄第11行~第15頁左上欄最下行)
 
 4-2.引用発明の認定
 (摘示a)の記載からみて、引用文献1の特許請求の範囲第1項には、
「[I](A)(i)少なくとも40モル%の一級ヒドロキシル基を含みそして1モル当り2,000ないし8,000グラムの範囲内の分子量を有するポリエーテルトリオールおよび
(ii)(i)と、平均して少なくとも2個のヒドロキシル基を有する追加のポリエーテルポリオールとの混合物で、その際このポリエーテルポリオールは(ii)の全ポリエーテルポリオール含有量の少なくとも40重量%までの量で混合物(ii)中に存在する、
から成る群から選択されるベースポリエーテルポリオ一ル100重量部、
(B)組成物中の各ヒドロキシル基に対して、化学量論的基準で、90-120%のイソシアネート基を与えるのに十分な量の有機ポリイソシアネート、
(C)高反発弾性ポリウレタンフオームの生産のための触媒的量の触媒(D)1-10重量部の発泡剤、
(E)下記の4)のシロキサン-オキシアルキレンコポリマーのフオーム安定化量、ただし
 4)は一般式
 Me3Si(OSiMe2)h(OSiMeG)dOSiMe3 
(上式において
 Meはメチル基であり、
 Gは-D(OR”)mAおよび-L-D(OR”)mA
(但しLは酸素または硫黄原子であり、
Dは                           .
(i)アルキレン基、
(ii)炭素、水素および酸素原子、その酸素原子はエーテル、エステルまたはヒドロキシ基として存在する、からなる基、および
(iii)炭素、水素および硫黄原子、その硫黄原子はチオエーテル、チオエステルまたはチオール基として存在する、から成る基、
からなる群から選択される2価の結合基であつて、D中には8個より多くない炭素が存在し、そしてLはD基の炭素原子に結合されており、
R”はプロピレン基とエチレンおよびブチレン基から成る群から選ばれる基とから成りその際エチレンおよびブチレン基の量は全(OR”)基の35重量%より少なく、
 mは1-15の平均値を有し、
 Aは-OR’、-OOCR’基、およびOCOOR’基から成る群から選
                    ∥
                    O
ばれる基であつてその際R’は炭化水素およびハイドロ力ーボキシ基から選ばれる脂肪族不飽和分を含まない基であって、A基は全部で11個より少ない原子を含む)
から成る群から選ばれる基であつて、
hは0-7の平均値を有し、dは1-5の平均値を有しそしてh=0の場合にはd=1-5であり;h=1または2の場合にはdは1-4であり;h=3または4の場合にはdは1-3であり;hが5の場合にはdは1-2であり;そしてhが6または7の場合にはd=1である)を有す、
から本質的に成る均質混合物を造り、
[II]次いでこの混合物を発泡させ、そして
[III]この発泡した組成物を硬化させる
の各段階を含むことを特徴とするワン-シヨツトポリエーテルベース高反発弾性ポリウレタンフオームの製造方法。」
が記載されている。
 また、(摘示b)において、上記「発泡剤」として水が用いられることが記載されており、(摘示f)の実施例7及び8において、同発泡剤として水が用いられている。
 さらに、(摘示f)の実施例7及び8において、上記「4)のシロキサン-オキシアルキレンコポリマー」として、 



Gは-(CH2)3(OCH2CH2CH2)2.2OMe基
の化学構造式のものが用いられ、その使用量が「ベースポリエーテルポリオール」100部に対して1.0部とされている(第14頁右下欄表中「pph界面活性剤」の欄参照)。
 したがって、引用文献1には、
「[I](A)(i)少なくとも40モル%の一級ヒドロキシル基を含みそして1モル当り2,000ないし8,000グラムの範囲内の分子量を有するポリエーテルトリオールおよび
(ii)(i)と、平均して少なくとも2個のヒドロキシル基を有する追加のポリエーテルポリオールとの混合物で、その際このポリエーテルポリオールは(ii)の全ポリエーテルポリオール含有量の少なくとも40重量%までの量で混合物(ii)中に存在する、
から成る群から選択されるベースポリエーテルポリオ一ル100重量部、
(B)組成物中の各ヒドロキシル基に対して、化学量論的基準で、90-120%のイソシアネート基を与えるのに十分な量の有機ポリイソシアネート、
(C)高反発弾性ポリウレタンフオームの生産のための触媒的量の触媒
(D)1-10重量部の発泡剤としての水、
(E)下記の4)のシロキサン-オキシアルキレンコポリマーの1.0重量部、ただし
 4)は 



Gは-(CH2)3(OCH2CH2CH2)2.2OMe基
を有す、
から本質的に成る均質混合物を造り、
[II]次いでこの混合物を発泡させ、そして
[III]この発泡した組成物を硬化させる
の各段階を含む、ワン-シヨツトポリエーテルベース高反発弾性ポリウレタンフオームの製造方法。」
の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。
 
 4-3.対比・判断
 本願発明と引用発明とを対比する。
 引用発明の「[I](A)ベースポリエーテルポリオ一ル」及び「[I](C)高反発弾性ポリウレタンフオームの生産のための触媒的量の触媒」が、それぞれ、本願発明の「ポリオール」及び「ウレタン触媒」に相当することは明らかである。
 また、引用発明の「[I](E)4)のシロキサン-オキシアルキレンコポリマー」は、引用文献1の(摘示c)において、フォーム安定化剤として用いられることが記載されており、同(摘示f)の実施例7及び8において、界面活性剤であることが記載されているから、本願発明の「シリコーン界面活性気泡安定剤」に相当するものである。
 さらに、引用発明の「[I](E)4)のシロキサン-オキシアルキレンコポリマー」は、本願発明の「シリコーン界面活性気泡安定剤」の一般式において、xが3であり、yが2であり、x/yが1.5であり、x+yが5であり、Gの式-D(OR'')mAにおけるDが-(CH2)3-基であり、R''が-CH2CH2CH2-基であり、mが2.2であり、Aが-OR'''基であり、R'''がメチル基であるものに相当する。
 そして、引用発明の「[II]次いでこの混合物を発泡させ、そして[III]この発泡した組成物を硬化させる」工程が、本願発明の「有機ポリイソシアネートをポリオールと反応させる」工程に相当することは明らかである。
 加えて、引用発明の「ワン-シヨツトポリエーテルベース高反発弾性ポリウレタンフオーム」は、「ポリウレタン軟質フォーム」に該当するものであり(必要ならば、岩田敬治編、「ポリウレタン樹脂ハンドブック」、日刊工業新聞社、1992年8月25日、第150頁参照)、また、引用文献1の(摘示d)において、「成形フオーム」として利用されることが記載されているから、本願発明の「ポリウレタン軟質成形フォーム」に相当するものである。
 したがって、本願発明と引用発明とは、
「ウレタン触媒、発泡剤として水、および式:
   Me3Si(OSiMe2)x(OSiMeG)yOSiMe3 
{式中、x/yの値は1.5であり、Gは式-D(OR'')mA[ここで、Dは-(CH2)3-基であり、R''は-CH2CH2CH2-基であり、mは2.2であり、そしてAは-OR'''基(ここで、R'''はメチル基である)を示す]を有する基である}を有するシリコーン界面活性気泡安定剤の存在下で、有機ポリイソシアネートをポリオールと反応させることからなるポリウレタン軟質成形フォームを製造するための方法。」
の発明である点で一致し、以下の相違点1及び相違点2で相違する。
 相違点1
 シリコーン界面活性気泡安定剤の一般式のx+yの値が、本願発明においては、5よりも大きく9までであるのに対し、引用発明においては、5である点。
 相違点2
 シリコーン界面活性気泡安定剤の使用量が、本願発明においては、0.05~0.15部/ポリオール100部であるのに対し、引用発明においては、1.0部/ポリオール100部である点。
 
 相違点1について検討する。
 引用発明におけるシリコーン界面活性気泡安定剤は、引用文献1の特許請求の範囲の[I](E)4)の一般式において、hが3であり、dが2であるものに相当する(摘示a参照)。
 そして、同一般式においては、上記hとdについて、「hは0-7の平均値を有し、dは1-5の平均値を有しそしてh=0の場合にはd=1-5であり;h=1または2の場合にはdは1-4であり;h=3または4の場合にはdは1-3であり;hが5の場合にはdは1-2であり;そしてhが6または7の場合にはd=1である」と規定されており、hとdの値がこの規定を満たすものがすべて同等に用いられることが示されている。
 してみると、引用発明におけるシリコーン界面活性気泡安定剤に代えて、引用文献1の一般式において、hが2でありdが3より大きく4以下のもの、hが3でありdが2より大きく3以下のもの、hが4でありdが1より大きく3以下のもの、すなわち、h+dが5より大きく7以下であるもの、すなわち、上記シリコーン界面活性気泡安定剤の一般式のx+yが5より大きく7以下であるものを用いることは、当業者が容易になし得ることである。
 そして、本願明細書においては、引用発明に相当する、本願発明の一般式のx+yが5であるシリコーン界面活性気泡安定剤を用いたものとの具体的な比較試験結果が示されていないから、本願発明の方法により、引用発明の方法に比して、格別に優れた効果が奏せられるものとはいえず、また、同明細書においては、本願発明の一般式のx+yが6であるものについてしか、その具体的な評価試験結果が示されていないから、同x+yが5よりも大きく9までであるシリコーン界面活性気泡安定剤を用いるものの全般にわたり、格別に優れた効果が奏せられるものともいえない。
 
 相違点2について検討する。
 引用文献1には、引用発明におけるシリコーン界面活性気泡安定剤がポリオール100部につき0.02-2.0部の範囲の量で使用されることが記載されている(摘示c参照)。
 また、(摘示e)の実施例3において、引用発明のシリコーン界面活性気泡安定剤と同じ一般式4)のシリコーン界面活性気泡安定剤の使用量をポリオール100部につき0.1部とした実験例も記載されている。
 そして、一般に、ポリマー組成物の調製に際して、低分子成分の存在によるポリマー本来の物性の低下の防止、添加剤成分の使用に係る費用の削減を目的として、ポリマー組成物中の添加剤成分の量を低減させることは、当業者が適宜試みることである。
 してみると、引用発明において、添加剤であるシリコーン界面活性気泡安定剤の使用量として、上記引用文献1に記載された範囲内のより少量のものを採用し、例えば、本願発明における0.05~0.15部/ポリオール100部の範囲とすることは、当業者が容易になし得ることである。
 また、本願明細書の記載からみても、 シリコーン界面活性気泡安定剤の使用量を本願発明のものとしたことにより、格別に優れた効果が奏せられるものともいえない。
 
 4-4.請求人の主張についての検討
 なお、請求人は、審判請求書の【本願発明が特許されるべき理由】の2.(1)において、以下のように主張している。
(a)本願発明はポリウレタン軟質成形フォームの製造方法であるのに対し、引用例1記載の発明は高反発弾性ポリウレタンフォームの製造方法であるから、両発明は対象とするポリウレタンフォームが相違する。
(b)1)本願発明においては、構造部分(OSiMe2)は必須であり、式中xは1~4.5の平均値を有すると規定しているのに対し、引用例1記載の発明においてhは0~7の平均値を有するとし、必須の要件とはしていない。
 2)その結果、引用例1記載の発明においては、x/yの値や、x+yの値について特段の規定が無い。
 3)本願発明の明細書中の表3や表5に比較例と共に記載されたとおり、これらの数値を外れた場合は、シリコーン界面活性気泡安定剤の少ない添加量で、フォームの内部全体にわたって小さい均一な気泡構造が得られず、また十分な表面安定性やベント安定性が得られない等、所望の効果を発揮し得ない。
(c)1)引用例1記載の発明において、添加量は、4種類の全く異なる一般式で示されるシロキサン-オキシアルキレンコポリマーについて包括的に規定されたものであるから、一般式4)で示されたフォーム安定剤の添加量の数値範囲は、実質的には示されていない。
 2)引用例1記載の発明の実施例3には、本願発明と異なる一般式を有するフォーム安定剤を、本願発明に相当する量で用いる例が示されているが、本願発明と別種のフォーム安定剤を、本願発明の添加量で用いた場合には、本願発明に不適のものしか得られず、また、実施例7には、本願発明の気泡安定剤に相当するフォーム安定剤を用いた例が示されているが、その添加量は本願発明の添加量と大きく相違し、少量で本願発明の効果が得られる点については記載も示唆もされていないから、引用例1は、本願発明に規定する特定の気泡安定剤を特定量使用する点について、技術的かつ実質的に開示するものではない。
(d)本願明細書の表3には、本願発明のものと引用例1記載の発明のものとの比較実験結果が示されており、これらの比較実験結果から明らかなとおり、本願発明は、特定のシリコーン界面活性気泡安定剤を特定の使用量、すなわちこれまで想定されていたものよりかなり少ない量の界面活性剤を使用することにより、効率がよいために使用レベルがより低くなり、コスト及びその放出を減らすことができる効果や、使用レベルを減らしてもフォームのバルク安定性が維持される等の効果を発揮するものである。
 
 上記主張について検討する。
(a)上記4-2.で述べたとおり、引用発明の高反発弾性ポリウレタンフォームは、本願発明のポリウレタン軟質成形フォームに相当するものであり、また、請求人は、本願明細書の段落【0006】において、引用文献1に対応する米国特許第4031044号明細書のポリウレタンフォームが軟質フォームであることを自ら認めている。
(b)上記4-2.~4-3.で述べたとおり、
1)引用発明におけるシリコーン界面活性気泡安定剤は、構造部分(OSiMe2)を有し、そのxの値は1~4.5の範囲内の3である。
2)引用発明におけるシリコーン界面活性気泡安定剤のx/yの値は、本願発明における0.25~5の範囲内であり、また、引用文献1には、同x+yの値を5より大きく7以下とすることが記載されている。
3)本願明細書においては、引用発明に相当する、本願発明の一般式のx+yが5であるシリコーン界面活性気泡安定剤を用いたものとの具体的な比較試験結果が示されておらず、また、同一般式のx+yが6であるものについてしか、その具体的な評価試験結果が示されていないから、本願発明の方法の全般にわたり、引用発明の方法に比して、格別に優れた効果が奏せられるものとはいえない。
(c)1)引用文献1に記載されたシリコーン界面活性気泡安定剤の添加量は、4種類の一般式で示されるもののすべてについて規定したと解するのが自然であるから、一般式4)で示されたフォーム安定剤の添加量の数値範囲は、実質的には示されているとするのが妥当である。
2)上記4-3.で述べたとおり、引用文献1の実施例3において用いられたフォーム安定剤は、本願発明と同じ一般式4)で表されるものであり、また、本願明細書においては、引用発明に相当する、本願発明の一般式のx+yが5であるシリコーン界面活性気泡安定剤を用いたものとの具体的な比較試験結果が示されておらず、また、同一般式のx+yが6であるものについてしか、その具体的な評価試験結果が示されていないから、本願発明の方法の全般にわたり、引用発明の方法に比して、格別に優れた効果が奏せられるものとはいえない。
(d)上記4-3.で述べたとおり、本願明細書の比較実験結果においては、引用発明に相当する、本願発明の一般式のx+yが5であるシリコーン界面活性気泡安定剤を用いたものとの具体的な比較試験結果が示されておらず、また、同一般式のx+yが6であるものについてしか、その具体的な評価試験結果が示されていないから、本願発明の方法の全般にわたり、引用発明の方法に比して、格別に優れた効果が奏せられるものとはいえない。
 したがって、請求人の主張はいずれも採用することができないものである。
 
 4-5.まとめ
 よって、本願発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
 
5.むすび
 以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであり、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
 よって、結論のとおり審決する。
【審理終結日】平成20年2月27日(2008.2.27)
【結審通知日】平成20年3月4日(2008.3.4)
【審決日】平成20年3月24日(2008.3.24)
【審判長】 【特許庁審判官】井出 隆一
【特許庁審判官】山本 昌広
【特許庁審判官】宮坂 初男

(21)【出願番号】特願2000-262025(P2000-262025)
(22)【出願日】平成12年8月31日(2000.8.31)
(31)【優先権主張番号】09/388293
(32)【優先日】平成11年9月1日(1999.9.1)
(33)【優先権主張国又は機関】米国(US)
(54)【発明の名称】ポリウレタン軟質成形フォームを製造するためのシリコーン界面活性剤
(65)【公開番号】特開2001-81151(P2001-81151)
(43)【公開日】平成13年3月27日(2001.3.27)
【最終処分】不成立
【審決時の請求項数(発明の数)】22
【前審関与審査官】武貞 亜弓

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