2008年12月15日月曜日

不服2007-33393

【管理番号】第1185915号
【総通号数】第107号
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】意匠審決公報
【発行日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【種別】拒絶査定不服の審決
【審判番号】不服2007-33393(D2007-33393/J1)
【審判請求日】平成19年11月7日(2007.11.7)
【確定日】平成20年9月6日(2008.9.6)
【審決分類】
D18  .113-WY (B3-1)
【請求人】
【氏名又は名称】ヴァーグ株式会社
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区南本町2丁目4番10号
【事件の表示】
 意願2006- 36561「宝石」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。
【結 論】
 原査定を取り消す。
 本願の意匠は、登録すべきものとする。
【理 由】
1.本願意匠
 本願は、平成18年12月28日の意匠登録出願であって、その意匠は、願書及び添付図面の記載によれば、意匠に係る物品が「宝石」であり、その形状は別紙第1に示すとおりのものである。
2.引用意匠
 原審において、本願意匠と類似するとして引用された意匠は、特許庁発行の意匠公報所載、意匠登録第1262009号(意匠に係る物品、宝石)の意匠であり、その形状は別紙第2に示すとおりのものである。
3.両意匠の対比
 本願意匠と引用意匠を対比すると、両意匠は、意匠に係る物品が一致し、その形状については、次のような共通点と差異点がある。
(1)共通点
 両意匠は、(A)クラウン部を略短円錐台形、パビリオン部をクラウン部よりも高さのある略逆円錐形とし、クラウン部とパビリオン部とが接する陵部にガードル部を設け、(B)クラウン部及びパビリオン部の周側面に、切子様の幾何学的なカット面を設けた基本的構成態様において共通し、具体的構成態様については、(C)クラウン部のテーブル面を10角形とした点、(D)パビリオン部において、底面視大小の星形カット面を設けた点、において共通する。
(2)差異点
 両意匠は、(a)クラウン部の形状について、本願意匠は、周側面に三角形及び四角形からなる40のカット面を有し、テーブル面を3重に取り巻いているのに対し、引用意匠は周側面に三角形のみからなる30のカット面を有し、テーブル面を2重に取り巻いており、本願意匠に比べテーブル面が広く形成されている点、(b)パビリオン部について、本願意匠は、ガードルに沿って5面の小さな三角形のカット面を有し、やや浅いパビリオンとしたのに対し、引用意匠には、ガードルに沿った小さなカット面はなく、やや深いパビリオンとした点、において差異がある。
4.類否判断
 そこで、共通点及び差異点を総合して、両意匠の類否を意匠全体として検討し、判断する。
 まず、この種物品においては、近い距離で、又は拡大して観察し、意匠全体の構成と共にカット面の具体的態様にも着目して意匠を認識するものであり、特に、台座等に嵌めて加工された場合においても最も目につきやすいクラウン部を中心とした上方からみた態様に注目して観察されるものと認められる。
 そうすると、両意匠に共通する基本的構成態様である共通点(A)、(B)は、両意匠の全体にわたるもので、意匠の骨格を形成するものであるが、この種宝石の分野においては極めて一般的なカット構成を示すにすぎず、格別看者の注意を惹くものではない。また、クラウン部のテーブル面を10角形とした共通点(C)については、この種宝石の分野で極めてありふれた態様であるため、格別看者の注意を惹くものではない。パビリオン部において底面視大小の星形カット面を設けた共通点(D)については、パビリオン部の大部分を占める特徴で、類否判断に一定の影響を与えるものである。
 一方、両意匠の差異点のうち、差異点(a)クラウン部周側面のカット面について、本願意匠は、クラウン部周側面のカット面の数が多く、また、三角形と四角形の組み合わせから構成されているため、複雑なカット面となっているのに対し、引用意匠のクラウン部周側部は3角形のカット面のみで構成され、かつカット面の数が少ないため、本願意匠のクラウン部に比べよりシンプルなカット面であり、さらに両意匠のテーブル面の広さの相違と相俟って、両意匠のクラウン部の態様は大きく異なっている。そして、クラウン部は、使用状態なども考慮すると、この種宝石において看者が最も注目する部位であるから、この差異は類否判断に与える影響が大きいものである。パビリオン部についての差異点(b)パビリオン部の深さの差異は、両意匠ともこの種宝石の分野において一般的にみられる程度の深さであるため、格別に看者の注意を惹くほどの差異ではなく、この差異が類否判断に与える影響は大きいとは言えないが、ガードルに沿った小さなカット面の有無については、本願の意匠はカット面の多いクラウン部と相俟って、引用の意匠に比し、全体が複雑なカット面であるとの印象を強めるものであるから、類否判断にある程度影響を与えるものである。
 そうすると、パビリオン部における共通点(D)は、類否判断に一定の影響を与えるものではあるが、この種宝石の分野において最も目に付きやすく、大きな範囲を占めるクラウン部の態様が相違し、さらにパビリオン部における差異も加味しすべての差異点を総合すると、差異点が相まって奏する意匠的効果は両意匠の共通点を上回ると言わざるをえず、両意匠を全体として観察する場合、本願意匠と引用意匠とでは異なる美感を起こさせるものであり、類似しない。

5.むすび
 したがって、本願の意匠は、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当せず、原査定の拒絶理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。
 なお、本願意匠の出願前の公知意匠として、意匠登録第1167066号、意匠登録第1264113号、アメリカ合衆国意匠特許公報オフィシャルガゼット所載、登録番号D499,983、同登録番号D512,934、の意匠があるが、いずれも本願意匠と類似するものではない。
 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
 よって、結論のとおり審決する。





【審決日】平成20年8月15日(2008.8.15)
【審判長】 【特許庁審判官】梅澤 修
【特許庁審判官】並木 文子
【特許庁審判官】樋田 敏恵

(21)【出願番号】意願2006-36561(D2006-36561)
(22)【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
(54)【意匠に係る物品】宝石
(52)【意匠分類】B3-192
(11)【登録番号】意匠登録第1343740号(D1343740)
(15)(24)【登録日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【最終処分】成立
【前審関与審査官】神谷 由紀、富永 亘


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