2008年12月6日土曜日

不服2006-6057

【管理番号】第1183012号
【総通号数】第106号
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許審決公報
【発行日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【種別】拒絶査定不服の審決
【審判番号】不服2006-6057(P2006-6057/J1)
【審判請求日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【確定日】平成20年8月15日(2008.8.15)
【審決分類】
P18  .121-WZF(G01N)
【請求人】
【氏名又は名称】財団法人電力中央研究所
【住所又は居所】東京都千代田区大手町1丁目6番1号
【代理人】
【弁理士】
【氏名又は名称】村瀬 一美
【事件の表示】
 特願2002-242576「二酸化窒素の濃度計測方法及び濃度計測装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 3月18日出願公開、特開2004- 85218〕について、次のとおり審決する。
【結 論】
 本件審判の請求は、成り立たない。
【理 由】
 本願は、平成14年8月22日の出願であって、その請求項1~4に係る発明は、平成18年5月1日付け手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定されるとおりのものであると認める。
 これに対して、平成20年2月27日付けで拒絶理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、請求人からは何らの応答もない。
 ここで、上記拒絶理由の内容は、以下のとおりである。
 
『1)本件出願の請求項1~4に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記1~4の刊行物に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
                記
1.A.SZCZUREK et.al.,APPLICATION OF OPTICAL REMOTE SENSING TECHNIQUES TO AIR QUALITY MONITORING, Environment Protection Engineering, Vol.24,No.3/4,p.145-157,1998 (特に、3. PHYSICAL PRINCIPLES OF OPTICAL REMOTE METHODS, 4. DOAS METHODの項を参照)
2.特開2000-131225号公報(特に、実施例1及び図3参照)
3.特開平8-159954号公報(特に、【0010】参照)
4.特開2001-27612号公報(特に、【0015】参照)
 
請求項1について
 キセノンランプ光源からの光を二酸化窒素等の大気汚染物質に照射すると共に、前記大気汚染物質を通過した光の連続スペクトルを計測し、前記キセノンランプ光源の連続スペクトルとの関係から大気汚染物質の濃度を求める差分吸収分光法により大気汚染物質の濃度を計測する濃度計測方法は、引用例1に記載されているように本願出願日前に公知である。
 そして、上記キセノンランプ光源は、UVからIRの波長域を含む白色光源であるところ、引用例2には、大気中の二酸化窒素を光学的に測定する際に、光源として白色発光ダイオードを用いる構成が記載されているから、引用例1に記載の濃度計測方法において、光源として、キセノンランプ光源に代えて白色発光ダイオードを採用し二酸化窒素の濃度を測定するようにすることは当業者が容易に想到する事項であると認められる。
 
請求項3について
 キセノンランプ光源からの光を二酸化窒素等の大気汚染物質に照射すると共に、前記大気汚染物質を通過した光の連続スペクトルを計測し、前記キセノンランプ光源の連続スペクトルとの関係から大気汚染物質の濃度を求める差分吸収分光法を行う大気汚染物質の濃度計測装置は、引用例1に記載されているように本願出願日前に公知である。
 そして、上記キセノンランプ光源は、UVからIRの波長域を含む白色光源であるところ、引用例2には、大気中の二酸化窒素を光学的に測定する際に、光源として白色発光ダイオードを用いる構成が記載されているから、引用例1に記載の濃度計測装置において、光源として、キセノンランプ光源に代えて白色発光ダイオードを採用し二酸化窒素の濃度を測定する構成とすることは当業者が容易に想到する事項であると認められる。
 
請求項2について
 キセノンランプ光源からの光を二酸化窒素等の大気汚染物質に照射すると共に、前記大気汚染物質を通過した光の連続スペクトルを計測し、前記キセノンランプ光源の連続スペクトルとの関係から大気汚染物質の濃度を求める差分吸収分光法を行う大気汚染物質の濃度を計測する濃度計測方法は、引用例1に記載されているように本願出願日前に公知である。
 そして、二酸化窒素は450nm付近に吸収ピーク特性を有することは周知であるところ(例えば、特開平9-101256号公報【0003】等参照)、450nmを含む波長領域に発光スペクトル特性を有する青色発光ダイオードを測定用光源に用いることは引用例3及び4に記載されているように光学測定における慣用手段であるから、引用例1に記載の濃度計測方法において、光源として、キセノンランプ光源に代えて二酸化窒素の吸収波長領域をその発光スペクトルに有する青色発光ダイオードを採用し、二酸化窒素の濃度を測定するようにすることは当業者が容易に想到する事項であると認められる。
 
請求項4について
 キセノンランプ光源からの光を二酸化窒素等の大気汚染物質に照射すると共に、前記大気汚染物質を通過した光の連続スペクトルを計測し、前記キセノンランプ光源の連続スペクトルとの関係から大気汚染物質の濃度を求める差分吸収分光法を行う大気汚染物質の濃度計測装置は、引用例1に記載されているように本願出願日前に公知である。
 そして、二酸化窒素は450nm付近に吸収ピーク特性を有することは周知であるところ(例えば、特開平9-101256号公報【0003】等参照)、450nmを含む波長領域に発光スペクトル特性を有する青色発光ダイオードを測定用光源として用いることは引用例3及び4に記載されているように光学測定における慣用手段であるから、引用例1に記載の濃度計測装置において、光源として、キセノンランプ光源に代えて二酸化窒素の吸収波長領域をその発光スペクトルに有する青色発光ダイオードを採用し、二酸化窒素の濃度を測定する構成とすることは当業者が容易に想到する事項であると認められる。
 
 なお、白色発光ダイオード及び青色発光ダイオードの発光スペクトルが、430nm以下の短波長を有さないことは、周知(例えば、特開2002-100229号公報(【0025】及び第2図には、青色LEDの発光スペクトルが、475nmをピークとし、430nm以下の波長をほとんど含まない特性が開示されている。)、特開2002-90111号公報(図4には、460nm付近にピークを有し、430nm以下の波長をほとんど含まない白色LEDの発光スペクトル特性が開示されている。)、日亜化学株式会社 LED標準仕様書 品名:青色LED 、型名:NSPB500S STSE-CB2122B (第9頁には、470nm付近にピークを有し、430nm以下の短波長をほとんど含まない特性が、開示されている。))であるから、引用例1記載の濃度測定の光源として、白色発光ダイオード又は青色発光ダイオードを用いた場合には、二酸化窒素を解離させないという効果を奏することは明らかである。』
 
 そして、上記の拒絶理由は妥当なものと認められるので、本願は、この拒絶理由によって拒絶すべきものである。
 よって、結論のとおり審決する。
【審理終結日】平成20年6月13日(2008.6.13)
【結審通知日】平成20年6月18日(2008.6.18)
【審決日】平成20年7月1日(2008.7.1)
【審判長】 【特許庁審判官】後藤 時男
【特許庁審判官】田邉 英治
【特許庁審判官】村田 尚英

(21)【出願番号】特願2002-242576(P2002-242576)
(22)【出願日】平成14年8月22日(2002.8.22)
(54)【発明の名称】二酸化窒素の濃度計測方法及び濃度計測装置
(65)【公開番号】特開2004-85218(P2004-85218)
(43)【公開日】平成16年3月18日(2004.3.18)
【最終処分】不成立
【審決時の請求項数(発明の数)】4
【前審関与審査官】樋口 宗彦、横井 亜矢子

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